西園寺花ごよみ

2019.10.2
金木犀 キンモクセイ - Osmanthus fragrans var. aurantiacus

 西園寺の山門をくぐり、どこからともなく甘い香りが漂ってきたら、季節はもう秋。香りの主は秋の訪れを告げる金木犀。花のない時期にはその存在をすっかり忘れているが、香りの先に橙色の小花をたくさんつけた木を見つけ、ああここにいたのだと思い出す。

 その芳香が遥か遠く、九里先までも漂うことから九里香とも呼ばれる。一里が約3.9㎞なので九里と言ったら約35㎞。西園寺のある多賀城から石巻くらいの距離であるが、そんな馬鹿なというのは野暮なもの、昔の人の感性の豊かさに感じ入る。現在では消臭芳香剤を思い起こす向きもあろうが、カクテルやお菓子作りに使うシロップとしても親しまれている。

 天高く馬肥ゆる秋、澄み渡った高い空を見上げ、秋の味覚に舌を打ち、冷たい風を肌で感じながら、虫の音に耳を傾ける。秋は五感が冴える季節。中でも嗅覚を刺激する金木犀の香りは、秋の到来をしみじみと感じさせてくれる。だが、そんな秋の便りも今年は真夏日と共にやってきた。温暖化の影響で季節の感じ方も大きく変わってしまうのだろうか。身近な暮らしの風景が変わらずに続くことを願う秋の一日。

 

参考文献

小泉さよ画『暮らしをもっと豊かにする 七十二候の楽しみ』世界文化社、2013年。