西園寺花ごよみ
2020.4.7
白木蓮 ハクモクレン - Magnolia denudata
自称「花の寺」西園寺の春は楽しい。墓地の土手のウメに続いて、庫裏の玄関前のサンシュユが黄色い花をつけ、万霊塔周辺のコブシが咲くと春の訪れを感じて心が浮き立つ。コブシは千昌夫の「北国の春」でもお馴染みだが、このコブシとよく間違えられるのが、コブシの開花から少し遅れて山門脇に真っ白な花を枝いっぱいに咲かせるハクモクレン。ハクモクレンもコブシも同じモクレン科の落葉高木で遠目では似ているが、よく見ると違いがわかる。花びらが薄くてひらひらと開いているのがコブシ。肉厚で上向きにきゅっとまとまっているのがハクモクレン。
コブシは日本の特産で中国にはない花。なので当然漢名はなく、日本で一般的な「辛夷」という漢字を「コブシ」と読ませることは本来間違いであり、「辛夷」は実はモクレンの漢名なのだという。モクレンは「木蓮」の別名として「木蘭」と記されることもあるが、「木蘭」は中国の特産で日本でいうモクレンとは別物。だから和名はなく、モクレンを「木蘭」とするのはそもそも誤りだとか。モクレンと言えば紫色の花の方を指し、白いモクレンはハクモクレンと区別する。そしてハクモクレンの漢名は「玉蘭」というそうだ。何にせよ、混乱するので下手に漢字を使わずカタカナ表記にしておいた方が無難かもしれない。ややこしいのでまとめると、
モクレン 漢名:辛夷 色:紫色
ハクモクレン 漢名:玉蘭 色:白 花びら:肉厚で上向き
コブシ 漢名:日本原産なのでなし 色:白 花びら:薄くてひらひら
とのこと。
西園寺では山門の脇がハクモクレン、万霊塔と納骨堂に近いのがコブシ。是非近くで違いを見比べてみて下さい。
参考文献
牧野富太郎『牧野新日本植物図鑑』北隆館、1980年。
牧野富太郎『植物一日一題』ちくま学芸文庫、2008年。