西園寺花ごよみ

2020.9.1
ハギ - Lespedeza

 其の二「桔梗」の項で紹介した秋の七草の第一に挙げられる、マメ科の落葉低木。赤紫色の花を咲かせるミヤギノハギは宮城県の県花であるが、萩と言えば今では仙台名物「萩の月」の方がお馴染みだろうか。現在の仙台市東部あたりにあった原野はかつて宮城野と呼ばれる都でも評判の萩の名所であり、歌枕として度々歌に詠まれた。今から1230年ほど前に陸奥按察使(むつあぜち)兼鎮守将軍(ちんじゅしょうぐん)として多賀城に赴任し、万葉歌人としても知られる大伴家持(おおとものやかもち)も、萩の歌を残している。

 西園寺の萩は白色で、毎年7月頃になると庫裡(くり)の玄関脇にもくもくと生い茂ってくる。夏真っ盛りの時には既に咲いているが、萩にはやはり秋が似合うような気がする。コロナウィルスの影響で行事が次々と中止され季節を感じる機会が減ったと嘆いてしまいがちであるが、足下の草花に目を向ければ、季節は確かに巡っている。

参考文献

藤原益栄『多賀城歴史歳時記』現代印刷出版、2019年。