今月の禅語

2023.4.3
其の四五
天上天下 唯我独尊 てんじょうてんげ ゆいがどくそん

 この限りなく広がる宇宙の中で、今、かけがえのない尊い「いのち」を授かっている!

 お釈迦様が誕生された時に七歩あゆんで発したとされる言葉です。「天上天下(てんじょうてんげ)」、この限りなく広がる宇宙の中で、「唯我独尊(ゆいがどくそん)」、今かけがえのない尊い「いのち」を授かっている!ということです。それぞれが独立独歩の代わりのきかない存在です。

 それは自分だけでなく、近くの親しい人も、道ですれ違うだけの人も、人生の中で一度も出会うことがないであろう地球の向こう側に生きている人も、みんな一人一人がかけがえのない、尊いいのちを授かっています。そう思う時、自分のいのちも、他人のいのちも、どうして大切にせずにいられましょうか。決して「ただわれ一人のみ尊し」とエゴイズムを奨励する言葉ではありません。

 四月八日は降誕会(ごうたんえ)、お釈迦様の誕生日です。花御堂をつくって、右手は天を指差し、左手は地を指さすかわいい誕生仏に甘茶をかけてお祝いをします。

 

出典:『五燈会元』巻一「釈迦牟尼仏」

世尊、纔(わず)かに生下するや、乃(すなわ)ち一手は天を指し、一手は地を指指し、周行七歩して、目に四方を顧みて曰く、「天上天下、唯吾独尊」と。

この連載について

 禅語とは禅の教えを端的に示した言葉です。悟りの境地を示していたり、修行者を悟りに導いたりするために用いられてきました。仏のこころはお釈迦さまから弟子へと、器の水を残さず次の器に移すが如く連綿と受け継がれていき、28代目の達磨大師により坐禅を仏道修行の中心に据えて、インドから中国に伝えられたとされています。

 禅語には禅僧が自身の悟りの境地を示したもののほかに、仏教経典、中国古典、詩文集等の様々な文献からも引用されています。今日では、床の間に掛けられた掛軸(墨蹟)に書かれた言葉として目にしたことのある方も多いのではないでしょうか。

 「不立文字(ふりゅうもんじ)、教外別伝(きょうげべつでん)(文字は全てを表現できず、文字で表現し尽せないところに伝えるべき核心がある)」という禅の家風もあり、禅語はその字義だけを考えても意味の分からないものもあります。禅仏教では自身の実践を重視しますが、禅語の紹介を通して皆様自身が字義の奥に潜む本当の意味、祖師方が伝えんとしてきたものを感じて頂けると幸いです。

 ここでは禅的教育研究グループ「じだんだ」の発行した「禅語カルタ百句」を紹介していきます。「禅語カルタ百句」は難解なイメージを持たれがちな禅語に如何にして親しんで貰うかというテーマのもとに製作されたカルタです。イラストが理解の助けとなり、禅語に触れる第一歩として適したものとなっております。じだんだ代表の柳楽一学師の許可を得てここに掲載してまいりますが、「禅語カルタ百句」にご興味の方は下記までご連絡願います。

 「とっつきにくい禅語に入っていく開かれた門となれば幸いです」柳楽一学

禅的教育研究グループ「じだんだ」 代表:柳楽一学
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