今月の禅語

2024.9.11
其の五八
諸悪莫作 衆善奉行 しょあくまくさ しゅぜんぶぎょう

悪いことをしてはいけません。良いことをしましょう。これこそ秘伝、仏道の究極です。

 優れた人のそばにいますと、それだけで心が洗われるような気持ちがします。そんな時は悪いことに手を染めることも、おそらくないでしょう。

 仏教の戒律はとても煩雑です。でも初めからそうだったわけではありません。

 とりわけお釈迦様の存命中は規則らしいものはほとんどなかったのです。集まった人々は皆、優れたお方を模範とし、自分もそうありたいと努めていたからです。

 お釈迦様は折にふれてこう諭されました。「もろもろの悪をなしてはならない。良いことを行いなさい」と。『七仏通戒偈(しちぶつつうかいげ)』といわれる仏教のもっとも基本的な教えの一節です。そうすれば「自ずから其の意浄(きよ)まる。これが諸仏の教えである」と続きます。

 複雑に見えるものでも、その根本のところはいつも簡明なのです。ただし、見かけはたやすいようですが、実際に行うとなると困難なことに気づきます。

 さて、あなたはこの簡単な教えが守れるでしょうか。

出典:『景徳伝燈録』巻四「杭州鳥道林禅師」条

問う、如何なるか是れ仏法大意。師曰く、諸悪莫作、衆善奉行。白(白居易)曰く、三歳の孩兒も也た恁麼に道うことを解くす。師曰く、三歳の孩兒も道い得ると雖も、八十の老人も行い得ず。

 

 

この連載について

 禅語とは禅の教えを端的に示した言葉です。悟りの境地を示していたり、修行者を悟りに導いたりするために用いられてきました。仏のこころはお釈迦さまから弟子へと、器の水を残さず次の器に移すが如く連綿と受け継がれていき、28代目の達磨大師により坐禅を仏道修行の中心に据えて、インドから中国に伝えられたとされています。

 禅語には禅僧が自身の悟りの境地を示したもののほかに、仏教経典、中国古典、詩文集等の様々な文献からも引用されています。今日では、床の間に掛けられた掛軸(墨蹟)に書かれた言葉として目にしたことのある方も多いのではないでしょうか。

 「不立文字(ふりゅうもんじ)、教外別伝(きょうげべつでん)(文字は全てを表現できず、文字で表現し尽せないところに伝えるべき核心がある)」という禅の家風もあり、禅語はその字義だけを考えても意味の分からないものもあります。禅仏教では自身の実践を重視しますが、禅語の紹介を通して皆様自身が字義の奥に潜む本当の意味、祖師方が伝えんとしてきたものを感じて頂けると幸いです。

 ここでは禅的教育研究グループ「じだんだ」の発行した「禅語カルタ百句」を紹介していきます。「禅語カルタ百句」は難解なイメージを持たれがちな禅語に如何にして親しんで貰うかというテーマのもとに製作されたカルタです。イラストが理解の助けとなり、禅語に触れる第一歩として適したものとなっております。じだんだ代表の柳楽一学師の許可を得てここに掲載してまいりますが、「禅語カルタ百句」にご興味の方は下記までご連絡願います。

 「とっつきにくい禅語に入っていく開かれた門となれば幸いです」柳楽一学

禅的教育研究グループ「じだんだ」 代表:柳楽一学
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